43話「ロリへの愛は世界を救うか?⑮~中ボス戦➁~」


吸血姫はアホ可愛い




ドナルド「全てを話そう。僕が快楽の魔族の手先となった過去をね」

「……」

胸元を見るドナルド。そこにはプラチナバッジがある。冒険者の最高峰であり……その人物の価値を決めてしまう残酷なバッジシステムだ。

ドナルド「あれは……冒険者バッジ制度が始まった頃の事だったよ。冒険者を画一的に評価すると称して導入された『バッジ』……そのものに意志を持たして、全てをバッジの色で評価した頃合の事だ。
世間では、今までやっていた民間軍事会社が作ったいい加減な評価制度と違って、分かりやすく実力を把握できて便利と言われたが……このパーフェクト冒険者バッジ制度には、とんでもない欠陥がある。君もその欠陥の犠牲になったから分かるだろう?」

「……迷宮管理機構や地球を支配する偉い人から邪魔だと思われると――最下位の黒バッジにされてしまう問題ですか?」

ドナルド「ああ、そうだ。普通に魔物を殺し、魔族と戦争している冒険者には特に影響はないが……僕と君には、とある共通点がある」



ドナルド「魔導とは、そもそも魔族が使う技術を模倣した代物だ。当然、魔界から持ち帰った文献を読む必要があり、よく考えて考察すると――恐ろしい事実が複数思い浮かぶ事は……君も経験上、分かるよね?」

「……魔族は人間の感情を食らう……」

ドナルド「そうだ。生物が自然に進化する場合……生物は周りの環境に大きく依存する。魔族が人間の感情を食べまくって、とんでもない栄養を得られるという事は――」

ドナルド「魔界にも人間が存在したという事さ。そして、魔族が使う魔物達の遺伝子情報を見れば分かる事だが――奴らは、99%以上、人間と似たような遺伝子を持っている事は知っているね?
アメリカは『魔界に行った人間を元に、手下となる魔物を作り出した』とか言ってるけど……そんなもん嘘っぱちさ」

ドナルド「チーズ博士が持ち帰った研究資料にはこう書いてあった。魔界とは全ての恒星が死に絶えた宇宙の可能性が高いと。
有りとあらゆる太陽がエネルギーを使い果たし、再利用できなくなったエネルギーが転がっている死の世界。魔族も人間も、太陽光が存在しない世界では活動できない。どんな食物連鎖も莫大なエネルギーがあるからこそ成り立つ」

ドナルド「ここまでいえば分かるだろう?魔界とは――遥か時の彼方にあり、全ての可能性を閉ざしてしまった暗黒の未来世界なんだ。魔族が人間の感情を食べるのは、奴らが人間から進化し、全く違う種族になったから。
魔界に大量の軍人が突撃した事で、奴らはその感情を喰らい、何億年、何兆年にも及ぶ深い眠りから目覚めたんだ」

「……ダンジョン世界は現在と未来を繋ぐタイムトンネルだった……?」

ドナルド「僕は、その秘密を知りすぎた。迷宮管理機構はプラチナバッジだった僕を黒バッジへと落とし――口封じをかねて、苦しみの魔族がいる領域に、僕を置き去りにしたんだ。黒バッジである。ただ、それだけで仲間たちは僕を見捨て。
強制的に魔法を封じられた夢の世界で、僕はありとあらゆる拷問と苦しみを受けた。目玉を抜かれて光がない世界を体験させられ、聴覚を失い音の世界で永劫と思うような長い時を過ごし……今、僕の器には、苦しみの魔族が宿っている。人類にとって最も残酷で容赦がない最悪の魔族の魂が宿っているんだ。
幸い、快楽の魔族様がそいつの精神をぶっ壊してくれたおかげで、かなり自由に行動できるけどね」

「先輩……アナタは快楽の魔族の手先でいいんですか?」

ドナルド「それどころか前都市長も、快楽の魔族の手先……いや、議員といった方がいいかな?快楽の魔族は民主的な議会制だからね。ところでトモヤ君。この悪徳都市の別名を覚えているかい?」

「快楽と美食の都市……?」

ドナルド「その別名通り、快楽の魔族のために存在する快楽都市なんだよ。西にいけば性的な快楽が、北に行けば食欲的な快楽が、東に行けば奴隷を購入して他人を従わせる快楽が転がっている。
快楽の魔族の家畜牧場は、こんな感じに――気持ちよくて退廃的なんだよ。なら、良いじゃないか。他の魔族主導で人類が家畜化されるぐらいなら、快楽の魔族主導で支配された方がマシだろう?
人間は生きているだけで苦しみ、絶望し、様々な感情を吐き出す生き物だから、他の魔族も妥協できるしね」


白「お師様ぁー!撤去が終わりましたよー!あ!?」


白☚風の魔法で遠くへ吹き飛ばされる。

瓦礫を除去終了

ドナルド「さぁ、トモヤ訓。僕と一緒に人類を家畜化しないかい?快楽の魔族が目指す先は無限大の気持ちいい世界が待っているぜ?」

「……断る」

ドナルド「なら、殺そう。君が負けたら白ちゃんはそうだなぁ……豚人間にでもプレゼントしようかな?きっと良い感じに鳴いてくれるに違いないよ。
君には複合魔法を見せてあげよう。ちゃんと僕の依頼を達成できたご褒美だ。僕は約束は守る男なんだぜ?」

戦いが始まった。
そんな報酬はいらない。だが、白真珠を傷つけるなら――俺は先輩を許せない。

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